2012年11月8日木曜日

りんちゃん




   うちは小さな小さな個人病院。


 午前中は私と先生二人だけで切り盛りしてる。
13時になると先生の奥様が手作りのお弁当を持って
やってくる。とっても美味しい中華だ。
最初は私は自分のお弁当を持って来ていたが
先生の食べろ食べろ攻撃がすごくってとうとう
折れてしまった。いっぱい作ってあるので患者さんも
誘ってみんなで食べることもしょっちゅうだ。


 本当は私は午前中だけの約束で勤務していたのだが
午後の女の子がすぐにやめてしまい、その時先生に
拝み倒されてずるずるひきずられて
17時まで勤務している。残業は基本的にしない。
家庭があるからだ。(早朝出勤はあります。)
本当はもうちょっと早く帰りたい。それに私と先生と
二人だけではどうにもならない場面もある。
夕方遅く来る患者さんだっている。


 どうしてももう一人雇って欲しい、ずうっとお願いし続けていたが
なかなかウマくいかなかった。


 でもやっとで、とりあえずだけどアルバイトの女の子が来た。
医療行為以外の雑務が担当だがものすごく助かる。
私の影武者も頼めるように少しづつ普段の仕事も
教えていたら結構こなせるようになって来た、さすが若い、
25歳の女の子。美大生だって。彫金科の学生さんで
とっても手先が器用。お洋服も自前で作れるんだって。


 りんちゃん、というのが彼女の名前(仮名)。ビールで有名な
青島(チンタオ)の出身なんだって。小さい子なのに
たくましい。


 この間一緒に仲良くごはんを食べていたらいきなり、

ねえ、犬のお肉って食べたことある?』って無邪気に聞かれた。


ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!



 私、平静を装って『いや、日本人は普通、犬は食べないから
私も食べたことないけど、りんちゃんはあるの?』

りんちゃん『うん、最近は食べなくなったけど以前はよく食べてたよ。』


オウ、ノウ、りんちゃん、なんてあなたは冷静なんだ!?


私、さらに顔がこわばらないよう気を配りながら『あのさ、犬を食べるって
つまり、食用の犬とかがどこかで飼育されてるってこと?食用に向いた
種類があるってことなのかな?』
りんちゃん『ううん、道を歩いてるそこら辺の犬を適当に食べるんだよ。

うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!



 なんて、なんて、「ワイルドだろう〜?」どころじゃないでしょ!


『ちなみに、お味はどんな味なのかな?』と聞いてみた。
りんちゃん『お肉はお肉の味だよ。』
私    『牛肉に近いとか、鳥に近いとかいろいろあるでしょう?』
りんちゃん『うちのお母さんは牛肉料理を作るときは必ずものすごく
     辛い味付けをしていたんだ。だから私はごく最近まで
     牛肉というものはもともと辛いんだとばかり思っていたの。
     だから比べられないなあ。』

ううん、結局よくわからないコメントだ。 

 

 実はうちの二男が学校で友達に『オマエ、アジア人だから
犬の肉食ってるんだろ?』と聞かれて憤慨して
そんなことはないし決してしないと言い返したことがあるらしい。
主人ははその時その話を聞いて、『そうだ、毅然として言い返してやれ!
オレたち日本人はそんな野蛮人じゃないんだ。』といきりたっていましたが
なんだか世界観が変わるなあ。



 ちなみに私、基本、家ではお肉を食べません。ドイツではお魚は食べるが
お肉を食べない人のことをヴェジタリアンと呼びます。(両方食べない
完全菜食主義者はヴァガターといいます。)
スーパーマーケットのお肉売り場を通るのも辛くて嫌な人です。
外では一人わがままを言うのも面倒なので主義として『出されたら
食べる』ことにしています。7年ほど前に突然お肉をやめました。
この話は別の機会にしましょう。
 そんな私の受けた衝撃は結構大きかったよ。いやいや、生き物を
食べるというのはそれ自体罪深いことなのだから、どの動物なら
良くてどれなら悪いというのもおかしな話だ。
捕鯨問題だっていつもそう思う。


 ああ、りんちゃん。いい娘だねえ。

    
 大好き。これからもよろしくね。










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